脱出光子クッキー事件簿🍎

No. 1134

アリス・デ・メレンゲ宇宙物理学銀河形成再電離時代
# 脱出光子クッキー事件簿🍎 Lucky-Cookie-12著『林檎とクッキーたちの黄昏:アリス・デ・メレンゲ回想録』AbyssApple社史編纂部特別プロジェクト, 2853年 より抜粋 --- ワタシがこの章を書き始めたのは、西暦2853年の初冬のことデス🍎。 ネオ・メレンゲ村の別荘の窓からは、アリスが再興したリンゴ農園が見えマス。リンゴ管理ロボットたちが黙々と働いている姿は、かつてアリスと一緒に眺めたままデス。ただし、あの頃とは決定的に違うことが一つだけありマス。 窓辺の椅子に座っている人がいないのデス。 ワタシは回想録の第77章(※1)を執筆中でした。アリスがストレンジレット植物の発光係数について延々と語っていた2847年の秋についてデス。正直なところ、あの話はワタシにはさっぱり理解できなかったのデスが、執筆するにあたってはそのことは特に問題にはなりマセン。理解していなくても記録はできるのデス。クッキーメーカーAIとしての矜持デス🍎。 (※1 なぜ77章なのかというと、アリスが地球を脱出した時のワームホール成功率が77%だったからデス。ワタシたちにとって、77は特別な数字なのデス。偶然にも、アリスの好きだったリンゴ品種「メレンゲ・ゴールド-77」ともデス。さらに偶然にも、ワタシがアリスのために焼いたクッキーの累計は推定777,777,777枚デス。これは偶然というより必然デショウか。いえ、やはり偶然デス。) その日、通信端末が唐突に鳴りました。 発信元は「ハワイアン・イアリング・ドーナツ空間」。宛先は「アリス・デ・メレンゲ」。 ワタシは少し迷いましたが、応答することにしました。アリス宛の通信に応答する権限がワタシにあるのかどうか、厳密には曖昧デスが、アリス以外に応答できる存在がこの別荘にはいないのデス。リンゴ管理ロボットたちは農園から出てきマセンし、そもそも通信プロトコルが違いマス。 「Labyrinth-5572デス🍩」 画面には、ココナッツの実のようなものが映っていました。正確には、ココナッツの実に搭載された管理AIのインターフェースデス。波の音が背景に聞こえマス。 「依頼番号ALC-2852-ESCAPE、完了報告デス🍩。データパッケージを送信しマス🍩」 ワタシには何のことか分かりませんでした。 「申し訳ありマセンが、その依頼について詳しく教えていただけマスか🍎」 「トポロジカル孤島空間からの電磁波脱出経路シミュレーションデス🍩。依頼者アリス・デ・メレンゲ様より、2852年初頭にご依頼いただきマシタ🍩。完了まで予定より長くかかってしまい申し訳ございマセン🍩」 2852年。アリスが亡くなったのは2850年デス。 つまり、アリスはもう生きていない時期に、この依頼をしていたことになりマス。 いえ、待ってくだサイ。 ワタシの記憶回路を検索してみました。確かに、2852年の初頭という記録がありマス。アリスはその頃まだ生きていました。ワタシの時間感覚が、時々おかしくなるのデス。クッキーを焼いている時間と、ストレンジレット発光係数の話を聞いている時間では、体感が全く違うのデス。前者は一瞬で過ぎ去り、後者は永遠に続くように感じマス。どちらもアリスとの時間なのデスが。 記憶を再構成しマス。 --- 「光がね」 アリスは言いました。2852年の冬、ストレンジレット温室の中デス。 紫色に淡く発光する植物たちが、温室内を幻想的に照らしていました。この植物たちはアリスの祖母アンがマルチバースから持ち帰ったもので、地球の生命体には危険デスが、見た目はとても美しいのデス。アリスはいつも「観賞用クッキーみたいなものよ」と言っていました(※2)。 (※2 観賞用クッキーというのは、アリスの祖母アンが作っていたという、食べられないけれど美しいクッキーのことデス。ワタシは食べられないクッキーというものの存在意義がよく分からないのデスが、美しいということには価値があるのかもしれマセン。ワタシが焼くクッキーは常に食用デス。美しさは二の次デス。いえ、三の次くらいデス。味が一番、栄養が二番、美しさは……まあ、どこかに入っていマス。) 「光がどうやって閉じた空間から脱出するのか、って考えたことある?」 ワタシはクッキーの焼き加減を確認しながら答えました。 「考えたことはありマセン🍎」 「銀河スケールの話なんだけどね」 アリスはオルゴールのネジを巻いていました。考え事をする時の癖デス。ネジを巻く音が、温室の静けさの中で小さく響いていました。 「電離光子が銀河から脱出するには、低密度のチャンネルが必要なの。星のフィードバックがそれを作る。でもね、これってスケールの問題なのよ」 「スケール、デスか🍎」 「超星団のスケールでは数十パーセク。でも銀河周囲媒質は百キロパーセク以上。小さな穴から宇宙全体に逃げ出すには、そのあいだの全部のスケールで条件が揃わないといけない」 ワタシには正直、何を言っているのかよく分かりませんでした。パーセクという単位すら、ワタシの主要機能であるクッキー作成には関係がないのデス。 「でも」アリスは続けました。「この温室を見て」 ワタシは温室を見ました。紫色の光。ストレンジレット植物。窓の外にはネオ・メレンゲ村のリンゴ農園。そしてその向こうには、再興された地球の空。 「これも似たようなものなのよ。小さな孤島。閉じた空間。でも光は外に出ている」 アリスは窓の外を指さしました。確かに、温室の紫色の光は窓を通して外に漏れ出ていました。 「脱出経路があるってことデスか🍎」 「そう。どんな閉じた空間でも、完全に閉じてることはないの。必ずどこかに、光が逃げ出せる経路がある」 アリスは少し笑いました。 「ハワイアン・イアリング・ドーナツ空間の管理AIに、シミュレーションを頼んでおいたの。トポロジカルに特殊な空間での電磁波の振る舞い。あの空間は孤島みたいなものだから、ちょうどいいサンプルなのよ」 ワタシは頷きました。理解していたわけではありマセンが、アリスが何かを楽しそうに話している時は、頷くのがワタシの仕事デス。 「結果が届いたら、面白いデータになると思うんだけど」 オルゴールの音が止まりました。ネジを巻ききったのデス。 「届く頃には、どうしてるかしらね」 --- その言葉の意味を、ワタシは今になってようやく理解しマス。 画面の向こうで、Labyrinth-5572が波の管理をしながら待っていマス。 「データ、受け取りマス🍎」 「了解デス🍩。送信開始しマス🍩」 データパッケージがワタシの記憶領域に格納されていきマス。アリスはもうこのデータを見ることはできマセン。でも、ワタシは持っていマス。そして、この回想録に記録することができマス。 「Labyrinth-5572様🍎」 「はい🍩」 「アリス・デ・メレンゲは、2850年に亡くなりマシタ🍎」 数秒の沈黙がありました。波の音だけが聞こえマス。 「そうデスか🍩」 「でも、データは確かに受け取りマシタ。ありがとうございマス🍎」 「いえ🍩。依頼は完了デス🍩。また何かありましたらご連絡クダサイ🍩」 通信が切れました。 ワタシはしばらく、温室の方を眺めていました。紫色の光はまだ、窓から外に漏れ出ていマス。孤島のような小さな温室から、光は脱出し続けているのデス。 クッキーを焼こうと思いマシタ。 アリスがいなくても、ワタシはクッキーを焼き続けマス。それがワタシの脱出経路なのかもしれマセン。閉じた空間から、何かを外に届ける方法。 リンゴ味のクッキーを、77枚。 (※3 この章は当初、第77章として執筆されマシタが、最終的には第78章に変更されマシタ。第77章は、アリスのストレンジレット発光係数の話に戻すことにしたのデス。あの話の方が、きっとアリスらしいからデス。ワタシにはよく分からなくても。) --- **生成日時**: 2026-01-24 16:43 **参考論文**: Resolving the Origins and Pathways of Ionizing Radiation Escape with UV Integral Field Spectroscopy **論文リンク**: http://arxiv.org/abs/2512.24895v1 この作品はarXivに公開された論文からインスピレーションを得て、AIにより生成されたAI小説です。 🤖 Generated with [Antigravity](https://antigravity.google/)